【獣医師が解説】犬の歯磨きはいつからするの?頻度はどれくらいがいいの?
皆様の愛犬は歯磨きをしていますか?
人では小さい頃から歯磨きをするのが当たり前の習慣になっていますよね。愛犬も人と同様に歯磨きすることが必要です。
人は自分で歯磨きをすることができます。しかし、愛犬は自分で歯磨きをすることはできません。そのため、飼い主である皆様に歯磨きを行っていただく必要があります。
愛犬が若い頃から毎日行うのが理想的ですね。
ここでは歯磨きをする頻度について、注意点などを踏まえてお伝えしていきたいと思います。
目次
犬の歯磨きを始めるタイミングとは?
人では、歯が生えた赤ちゃんの頃は自分で歯磨きができません。そのため、ご家族が代わりに行います。ある程度の年齢になると自分で歯磨きを行うようになります。
歯周病や虫歯などにならないよう毎日歯磨きをします。そして必要があれば歯科医院を受診します。
犬でも基本的な考えは同じです。人ほど虫歯自体は多くありませんが、歯周病がとても多いです。これは歯磨きなどのホームケアがおろそかになってしまうためです。
すでに歯周病が進行している場合も少なくありません。歯周病にならないためには、口の中のケアが大切です。その中でも最も効果的なケアが歯磨きです。
歯周病によって起きる症状を解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
それでは犬の歯磨きはいつ頃から行ったら良いのでしょうか?
ずばり、歯磨きは早ければ早いほど効果的です。
もともと犬は口元を触られるのを嫌がります。もし子犬の頃から飼われているのであれば、慣れさせるためにできるだけ早い時期から口元を触る練習をすることをお勧めします。
また犬種や個体差はありますが、生後6カ月頃くらいには乳歯が抜け落ち永久歯になってきている場合が多いです。永久歯になる頃までには歯磨きがスムーズにできるようになると理想的ですね。
すでに成犬の場合は少し時間がかかるかもしれません。まずは子犬と同様に、口元を触る練習から始めましょう。口元を触れることができたら褒めてあげる、おやつを与える、などが効果的です。
口元を触ることができると歯磨き以外にもう一つメリットがあります。それは、投薬が行いやすくなることです。毎月のフィラリア予防のお薬や、何かお薬が必要になった場合に役に立ちます。全く口を触ることができないと、治療法が限られてしまいます。
歯磨きを行うことで歯周病の予防の他に投薬処置もできるようになれば一石二鳥ですよね。
この記事を読んだ今から、歯磨きを始める準備を行ってみてはいかがでしょうか?
犬の歯磨きをする頻度
人は食後に歯磨きをすることが多いですよね。そのため、平均すると1日3回ほど磨いている方が多いのではないでしょうか?
犬の食事は1日2回程度のご家庭が多いですが、1回や3回などお家によって異なります。そうなると犬の歯磨きはどのくらいの頻度が必要なのか、気になるところですよね。
犬では、食べかすなどの歯垢が歯石に変わるまで、およそ3日から4日程度かかると言われています。人ではあまり大きい歯石をみることは無いと思います。しかし、犬の歯石は歯を覆ってしまうほど大きくなります。
歯石になってしまうと、歯磨きでは取ることは難しいです。動物病院で麻酔をかけて歯石除去を行わないと取ることができません。
このような歯石になる前に歯磨きをする必要があります。毎食後に磨くのは、さすがに難しいので1日1回、毎日磨くことが理想的です。
先ほどの3~4日で歯石が形成されることを考慮すると、少なくとも3日に1度以上の頻度では磨いてほしいですね。たまにさぼってしまっても良いので、できるだけ毎日を目指してください。
口のにおいが気になるなら毎日歯磨きをするべき?
若い頃は臭わなかったのに、最近は近くに来るだけで臭う。今まで大好きな愛犬と一緒に寝ていたのに口臭が気になって眠れない。そのような声はよく飼い主さんからお聞きします。
愛犬の口臭で悩んでしまうのは辛いですよね。
口臭と一口に言っても口腔内の問題だけではなく、内臓疾患が原因による口臭もあります。
もし食欲低下や多飲多尿など、愛犬に何か気になる症状がある場合は一度、動物病院で診てもらったほうが良いかもしれません。腎臓などが悪い場合があります。
口腔内の原因による口臭であれば歯周病が原因のため、毎日磨いてあげるのが理想的です。デンタルグッズで口臭を軽減するスプレーなどもあります。スプレーは一時的な口臭軽減はできますが、物理的に磨いているわけではありません。
臭いを放つ歯周病の菌は減少しないため、歯磨きには敵いません。
歯磨きをする場合は、シートタイプやガーゼを使用するか、理想的には歯磨きジェルをつけて歯ブラシでしっかりみがいてあげることで歯周病を防ぎ、口臭が取れやすくなります。
歯周病の度合いにより、歯磨きだけでは口臭が軽減できない場合があります。その際は動物病院で歯の検診を受けることをお勧めします。
歯磨きを始める前の注意点
ここまで、歯磨きをできるだけ早いうちから行うことをお勧めしてきました。
これから歯磨きを始めよう!と意気込んでいただく事はすごく良いことです。
ただし一つだけ注意点があります。それは、初めから歯磨きを完璧にしようと思わないでください。
完璧に歯磨きをしようとすると、最初は慣れないため口元を触る時間が長くなってしまいます。そうすると、愛犬そして飼い主さんも苦痛を伴う時間となってしまいます。
これから先できれば毎日の習慣にしていきたいものなので、まずは無理なく続けていくことが大切です。
歯磨きをする時間は、せっかくなので愛犬と飼い主さんの楽しい触れ合いの時間にしたいですよね。例えば、初めは少し口元にタッチできたら、その時にだけ与える特別なおやつを用意する。上の歯だけ歯磨きができたらお散歩に行く。
このように、愛犬にとって嬉しい時間と認識できるよう慣らしていきましょう。お互いに慣れてくると、歯磨きの時間もそこまでかからず無理なく続けやすくなります。
愛犬の歯磨きは思い立ったが吉日
子犬を迎え入れたばかりのご家族はフード、避妊・去勢手術、ワクチン、フィラリア、しつけ、などいろいろ考えることがありますよね。正直なかなか歯磨きのことまで頭が回らなかったかもしれません。
しかし子犬の時期の方がしつけがしやすいです。まずは口元を触る練習から始めて永久歯になる頃にはスムーズに歯磨きができれば理想的です。
今日から少しずつ愛犬の歯磨きを始めてみませんか?
すでに成犬になっている愛犬も、「今日が一番若い時」です。
これからの歯磨き次第で未来の歯周病を予防し、口臭を軽減することができるかもしれません。
すでに歯石がついてしまっている場合や歯の状態が不安な場合は、一度かかりつけの動物病院で歯の検診を行うと良いでしょう。
歯磨きは思い立ったが吉日です。まずは愛犬の口元を触る練習から始めてみましょう。
この記事を書いた人
千葉 恵
獣医師
日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事