【獣医師が解説】犬にアロマは大丈夫?使っていい・いけないものを解説
疲れている時、癒されたい時にアロマの良い匂いを嗅ぐと心や体が落ち着きますよね。私たち人間が癒しを感じるアロマですが、犬の場合はどうでしょう?
犬に対するアロマの使用に関しては、まだ歴史が浅い部分があります。しかし、メディカルアロマテラピーとして治療の一環でアロマを使用する事があります。アロマを使用することで自然治癒力を高めていくことが期待されています。
ここでは犬のアロマの使用に関して、解説していきます。アロマが好きな方は参考にしてくださいね。
目次
犬もアロマで癒される?
人間が癒されるアロマですが、犬も同様に良い効果が期待されるものもあります。
アロマは治療にもなる
アロマとは正式にはアロマセラピーまたはアロマテラピーといいます。アロマセラピーとアロマテラピーは表記の違いで、同じものと考えて問題ありません。
アロマセラピーは、植物の花、葉、茎、果実などから採取した精油(エッセンシャルオイル)を体内に取り入れる自然療法です。心や体全体に効果があるとされ、体の不調とともにストレスを軽減することで、癒しにつながると考えられています。
さらに、メディカルアロマセラピーといって、医療や福祉の現場で導入されていることもあります。国によっては医療行為として認めている場合もあります。
科学的にも香りが人の心に作用することは分かっています。さらに薬理効果のある精油は皮膚から吸収させると体の不調の軽減が期待できます。
アロマの犬への効果
犬の場合でも、メディカルアロマテラピーといって治療の1つとして行われることもあります。実際に症状の改善がみられるため、体の不調やストレスの改善、そしておそらく人と同様に癒しが得られていると考えられています。
犬に使用する場合は、ディフューザーを使用して香りを室内に拡散したり、オイルマッサージ、スプレーなどを行ったりします。
中でもオイルマッサージは効果的ではありますが、使用法によっては体に負担をかけやすいです。きちんと知識を持った方がされる方が安心です。
(※)参考:ホーム | JMAACV 日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会
アロマの臭いは犬には強すぎる?
ご存知の方も多いと思いますが、犬の嗅覚はとても優れています。そのため麻薬犬や警察犬として、お仕事をしているワンちゃんもいますよね。
人の何倍もの嗅覚があるため、犬にアロマなどの匂いを嗅がせると強烈に感じてしまうのでは?と思うかもしれません。
実際には匂いを強烈に感じると言うよりも、匂いを細かくかぎ分ける能力に長けています。
人よりも体が小さい分、使用する量は少なくしなければなりません。しかし、少しの香りが何倍も強烈に感じているわけではありません。
ちなみに、人が良い匂いと感じていても、犬にとって良い匂いかどうかは好みもあり難しいところです。
犬に使用しても良いアロマ5つ
精油はもともと植物から作られていますが、とても高濃度に濃縮されています。そのため必ず薄めて使用します。濃度が高いと体に良いものでも害になってしまうので注意してくださいね。
ここでは代表的な5つをご紹介します。
ラベンダー
ラベンダーには鎮静作用があり、気持ちを落ち着かせる作用があります。安全性も高く、人気のアロマです。殺菌作用や虫よけ作用などもあります。
ゼラニウム
ダニ除けとして有名なゼラニウムは、自律神経を整えると言われています。ローズに似たような匂いが特徴でローズゼラニウムと言われることもあります。
ローズマリー
ローズマリーはやる気を出してくれる効果があります。そのため、しつけやトレーニングの時に使用すると効果的です。
カモミール
カモミールは緊張を和らげる効果があります。そのため、不安になりやすい子や神経質な子にお勧めです。旅行などで緊張感の緩和にも良いでしょう。
マジョラム
マジョラムは鎮静作用があり、自律神経を整える作用があります。落ち着かせたい時などに使用すると効果的です。
犬に使用してはいけないアロマ3つ
安全性に関してはもともと使用を控えなければならない精油のほか、正しい知識と使い方にもよります。
例えば、原液で皮膚に塗布したり、舐めたりすることはとても危険です。体に負担をかけてしまい思わぬ事故を招くことがあります。
使用する場合は、安全性が高く一般的に犬でも使用されているものを選んでください。
香料は種類がとても多く、すべての種類で犬に対する効果や毒性に関しては分かっていません。
他にもたくさん使用しない方が良いものがありますが、ここでは代表的な3つをご紹介します。
オレガノ
刺激的な臭いが特徴で、特に皮膚に刺激を与えやすいため避けた方が良いでしょう。
クローブ
オレガノと同様に刺激的な香りが特徴です。匂いが強い上に、特に舐めてしまうと危険です。
ティーツリー
ティーツリーオイルは中毒による死亡例も見られます。専門家が使用する場合は問題ないかもしれませんが、お家で使用するのは危険です。
(※)参考:どうぶつとアロマテラピーとの相性について | みんなのどうぶつ病気大百科
愛犬の悩みに合わせたアロマの選び方は?それぞれ解説 – pepy
ゼラニウム | 犬のアロマセラピー基礎知識 | 愛犬のアロマセラピー | Office Guri Aroma
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犬とアロマを使うときの注意点
アロマの量に注意
私たちに比べ、犬の体は小さいです。少しの量でも濃度が濃すぎると具合が悪くなる可能性があるので注意してください。
使用する量は種類によりますが、人間が使用するおよそ1/4~1/2程度で十分と思われます。
香りが好みのものか確認しよう
犬によっておそらく好きな匂い・嫌いな匂いがあります。人間でも匂いの好みはありますからね。
初めてアロマを使う際は、鼻に近づけすぎないように少し匂いを嗅がせます。愛犬の好みの匂いであれば、鼻をクンクンして近づいてきます。
反対にクンクンした後に、顔を背けたり匂いから遠ざかったりする場合は、その香りが苦手な可能性があります。
好みではない匂いを嗅ぐのは、ストレスになります。その場合は、使用を控えてお部屋の換気をして香りを薄めるようにしてください。
オイルマッサージは要注意
オイルマッサージをする場合、まずは皮膚のパッチテストをしてください。飼い主さんも触れるのでパッチテストを行うと安心です。
適切に薄めた精油を犬の皮膚(太ももの内側等)の場所に塗布し、2日ほど様子を見ます。
肌に何か異常が見られた場合は使用を控えましょう。
原液は使用しないでください。原液のまま使用すると、肌のトラブルに発展します。必ず薄めた状態で使用し、舐めないようにしてください。
またオイルの中には、太陽光によって成分が変化するものがあります。そのため、オイルマッサージをした後の散歩は控えてください。
このようにオイルマッサージに関しては、きちんとした知識を持っていないと場合によっては体の状態が悪くなってしまいます。
専門の方に行ってもらうのが理想ですが、お家で行う場合はある程度知識を持った上で行ってください。
正しく使用すれば効果的
アロマはとてもたくさんの香りがあり、よくわかっていない所もあります。人にも犬にも効果はありますが、適切に使用しなければ命に関わることもあります。
効果があるからといって濃い濃度で使用したり、管理不十分で舐めてしまったりすると中毒を起こしてしまいます。特にアロママッサージなどは皮膚に直接触れるので正しい知識を持って行うようにしてください。
一度専門家で行ってもらったり、使用したいアロマがある場合は相談したりすると良いでしょう。
愛犬と一緒に癒される香りが見つかると嬉しいですね。
この記事を書いた人
千葉 恵
獣医師
日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事