【獣医師が解説】犬の1才は人間の何才?犬の年齢について解説します
同じ時間を過ごしていても、愛犬は私たちよりも早く歳をとります。見た目は愛くるしく、年齢を感じさせなくても、意外に飼い主さんよりも年上かもしれません。
愛犬の年齢の重ね方が分かれば、人に置き換えて考えることができますよ。年齢に合ったケアをしてあげることで愛犬が快適な生活が送ることができます。
犬の年齢は人間の何歳にあたるの?
犬は人に置き換えると一体何歳になるのでしょうか?考え方や換算方法を確認して、愛犬の年齢を確認してみましょう。
犬の年齢について考えよう
年齢とは、その人が生まれてから現在までの単純な年月を指します。
犬も私たちも一緒に過ごす1日の長さは同じです。
しかし人間の寿命と犬の寿命は大きく異なります。そのため、犬の年齢を人の年齢に換算すると、1日をかなりのスピードで過ごしていることになります。
犬の年齢の計算方法は諸説あります。簡単に計算できる方法と、少し難しい方法があるのでご紹介します。
犬の年齢の簡単な換算方法
小~中型犬と大型犬は成長スピードが異なるので、少し計算方法が異なります。
小~中型犬での計算式
犬の1歳目で20歳とし、その後毎年4歳ずつ年を取る換算方法です。
この換算方法はで用います。
人間年齢=20+(犬の年齢-1)×4
大型犬での計算式
犬の1歳目で12歳とし、その後毎年7歳ずつ年を取る換算方法です。
人間年齢=12+(犬の年齢‐1)×7
自然対数を使用した換算方法
2019年の論文で、犬の実年齢の自然対数を16倍して31を加えた数値が人の年齢に換算した犬の年齢である、と米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは発表しています。
人間年齢= 16ln(犬の年齢)+31
(lnは自然対数)
暗算ができないので難しいですが、電卓でInが使用できれば計算できます。
iPhoneの電卓であれば、横にするとでてきます。
また、この計算式はラブラドールレトリバーを想定しているので、他の犬種について適用可能かどうかは研究が進められています。
画像引用:犬の年齢をヒトの年齢に換算するための新たな計算式が明らかに|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
人間年齢に換算してわかること
この他にも計算方法は色々あります。
イメージしやすいため簡単な換算方法から考えると、小~中型犬はおよそ4倍速、大型犬はおよそ7倍速で生活していることが分かります。
1年がそれぞれ4年・7年と早いスピードで経過していきます。そのため1日1日を大切にしたいですね。
ある程度の人間年齢が分かると、生活で気を付けるべきことが見えてきます。
犬のご長寿さんを目指すには
WHOが発表した2021年版の世界保健統計(World Health Statistics)によると、平均寿命が最も長い国は日本で84.3歳でした。
なぜ日本はこれだけ長寿国なのでしょうか?
それは食事や医療制度の充実、生活習慣が関係していると考えられています。
犬は自分でごはんを選んだり、病院に行ったりはできません。そのため、より長寿を目指すには、このような食事や生活習慣、医療などに飼い主さんが気をつける必要があります。
犬のご長寿さんを目指して予防できること6つ
愛犬とは一分一秒でも長く一緒にいたいものですね。その為に飼い主さんができることは大きく6つあります。
混合ワクチン接種
ウイルスによる病気を防ぐことができます。必ず毎年打たなければいけないものではありませんが、愛犬の生活環境によって必要かどうか考えましょう。
ウイルスは感染してしまうと命にかかわります。
フィラリア症の予防
フィラリア症は蚊が媒介する寄生虫による疾患です。感染すると体内で成長し、心臓に寄生します。悪化すると心臓病の症状がでて、最悪死に至ります。
一昔前までは犬の死亡率のトップでした。薬により確実に予防できる疾患です。
避妊手術・去勢手術
高齢になってくるとホルモンバランスが崩れてしまい、性ホルモンに関係した病気になりやすくなります。
避妊手術をすることで、メスでは子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、および卵巣の病気などを防げます。
去勢手術をすることで、オスでは前立腺疾患や肛門周囲の腫瘍、および会陰ヘルニアなどを防げます。
病気の予防という点で、動物病院では手術をお勧めしています。全身麻酔が必要なこと、将来子供を望めなくなること、などデメリットもあるためご家族でご検討ください。
歯周病ケア
3歳以上になると8割以上は歯周病といわれています。まずは若いうちから口腔ケアを行い、歯周病予防を行いましょう。
生後6ヶ月までに乳歯が抜けないことがあります。乳歯が残ると、永久歯との間に歯垢が溜まりやすくなります。そのため乳歯が残っている場合は、早めの抜歯をお勧めします。
歯磨きなどの口腔ケアを行い、歯周病予防・進行の抑制をしましょう。
すでに歯周病の場合は、麻酔下での歯周病処置が必要かもしれません。
高齢になるほど麻酔リスクが上がるので、早めの対応が重要です。
定期的な健康診断
中高齢なってくると様々な疾患が出てきます。
犬は言葉が話せません。体調が悪くても病院にいけず我慢しているかもしれません。
手遅れになる前に、1年に1回は健康診断を受けると良いでしょう。
フィラリア予防の際に採血をするので、その時に一緒に血液検査をするのもおすすめです。
食事の管理
犬は自分で食事を選べません。そのためお食事は飼い主さん次第で決まってきます。犬の体と人の体は違います。人間にとってバランスの良い食事だとしても、犬に合っているとは限りません。
そのため、人の食事を与えるのではなく、栄養バランスの良いドッグフードを選びましょう。
また、ライフステージによって、必要な栄養は異なります。
子犬ではエネルギーが必要なため高栄養食が必要です。高齢になってくると関節や腎臓に配慮したフードなど、要求するものが変わってきます。特に持病などが無ければ年齢対応のフード、病気や症状がある場合はそれに対応したフードを選びましょう。
運動
人間と同様に体のために運動する事はとても大切です。運動をしないと筋力が低下し、足腰が弱くなります。また、肥満や内臓系の衰退につながり、免疫力も低下します。
年齢を重ねていくと、昔ほどアグレッシブには動けないかもしれません。無理をすると体を痛めてしまう事があるので、適度な運動を心がけてくださいね。
犬の長生きと心拍数と寿命の関係
犬の寿命には心拍数が関わっていると言われています。
心拍数と寿命の関係
皆さんは大ベストセラー本の『ゾウの時間ネズミの時間』をご存知ですか?この本では『哺乳類はサイズに関係無く一生に打つ心拍数は約20億回、呼吸数は約5億回である』と書かれています。心拍数15億回で考えているデータもあります。
ゾウの心拍は遅く、ネズミの心拍は早く、寿命は大きく差があります。
しかし、心拍数という単位で考えれば、同じ長さであるともいえます。
犬と人の心拍数は似ている?
小型犬の心拍数は60―80回程度、呼吸数は20回程度
大型犬の心拍数は40―50回程度、呼吸数は15回程度
成人の心拍数は60-100回程度、呼吸数12-20回程度
となります。
ハツカネズミの心拍数は600-700回と明らかに早いですが、犬と人は割と近い数値を示しています。
犬ももっと長生きできる
人間をこの法則に当てはめて考えると、26.3歳になるようです。現在の平均寿命とは50年以上離れていますが、縄文人の平均寿命は31歳程度と推定されています。
人間も、もともとはこんなに長く生きられない生物だったようですね。
今のところ、小型犬の方が大型犬よりも寿命が長いことは、この法則では説明がつきません。しかし、人間でこれだけ寿命を延ばせていることを考えると、犬の寿命もまだまだ伸ばせるのではないかと思います。
犬自身で生活環境や病気の予防などを行うことはできません。愛犬を十分にケアすることで、ご長寿さんを目指しましょう。
この記事を書いた人
千葉 恵
獣医師
日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事