【獣医師が解説】犬の歯磨きの正しいやり方と磨き残しが起きないコツ
歯周病を予防するため、進行を遅らせるために歯磨きはとても重要です。
愛犬の口腔ケアを始めようと思ったとき、歯の構造や歯磨きの方法が分からないと悩んでしまいますよね。
使用するアイテムによって歯磨きの難易度、歯周病の予防の程度も変わってきます。
歯磨きは、できれば毎日行うことが理想的です。そのために愛犬そして飼い主さんが続けやすい方法を見つけられたらベストですよね。
ここでは犬の歯磨きのやり方やコツなどについてお伝えしていきます。
目次
犬の歯磨きの正しいやり方
犬の歯磨きの正しいやり方を3ステップで解説します。順番に試してみてください。
STEP1 犬の歯の構造を知る
犬の歯の構造を知ることで、より念入りに磨くべき歯が分かります。
まず犬の永久歯は、全部で42本あります。想像より多く感じた方も多いかもしれませんね。
左右ともに上顎に切歯3本/犬歯1本/前臼歯4本/後臼歯2本、下顎に切歯3本/犬歯1本/前臼歯4本/後臼歯3本あり、計42本あります。
実際の歯や模型をみると分かりやすいですが、歯の根元がとても深い歯もあります。
特に上顎の歯の根元が深く、重度の歯周病になると鼻腔が近いため口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)という状態になることがあります。その場合、症状はくしゃみや鼻水・鼻血などがみられます。
また下顎の根元が重度歯周病になると顎が骨折しやすくなります。
牙と言われる犬歯や、物を噛み切る際に使用する上顎の第4前臼歯(上顎で1番大きい歯)、下顎の後臼歯は特に歯石が付きやすいです。
そのため、これらの歯は重点的にケアをする必要があります。
STEP2 口元を触れるようになる
歯磨きを初めて行う場合は、愛犬は口を触られることを嫌がるかもしれません。その場合は無理に続けようとせず、まずは口元を触る練習から始めましょう。
口元をタッチできたらご褒美をあげます。口元をタッチできるようになったら次は歯茎を指でタッチし、ご褒美をあげます。
これを繰り返していき歯茎を触っても嫌がらない、怒らない状態に慣らしていきます。
すでに口元や歯茎が触れる子に関してはこちらの行程は飛ばして問題ありません。
STEP3 デンタルグッズを使用する
実際に歯茎が触れるようになったらデンタルグッズを使っていきましょう。デンタルグッズによって、歯磨きの難易度や歯周病の予防度合いが変わってきます。
最終的には1番効果的な、歯ブラシを使った歯磨きを行うのが目標です。ただし、いきなり歯ブラシを使用するのは難しいです。まずはガーゼやシートタイプのデンタルグッズを使って慣れていくのがお勧めです。
ガーゼやシートタイプ
ガーゼやシートタイプは指に巻いた状態で愛犬の口に挿入します。その際、歯自体を磨くのではなく、歯と歯茎の間を磨くよう意識してください。重点的にやさしく擦ってあげるイメージで指を動かしていきます。
強い力で擦ると痛みがでることや、出血することがあるため気を付けて下さい。
ガーゼやシートタイプを使う場合は、乾燥していると歯茎を傷つけてしまいます。歯磨きペーストやお水などで湿らせた状態で使いましょう。
歯磨きペーストは歯周病予防に適しているため使用することをお勧めします。その際、歯磨きペーストは必ず犬用のものを使い、人間用のものは使用しないでください。
成分内容により体調を崩す恐れがあり危険です。
歯ブラシ
実は歯周病の度合いにより選ぶ歯ブラシは少し異なります。幼犬や歯周病になっていない場合は、毛足が均一の長さのタイプで充分です。
すでに歯周病があり、歯周ポケットがある場合には毛足が均一だと歯周ポケットに入りません。そのため、細く毛足が長いものの方が歯周ポケットの隙間に届き適しています。
歯ブラシは犬用のものはヘッドが小さく、毛の太さも適しているため使用しやすいです。人用のもので代用する場合は、小児用ならヘッドが小さいため扱いやすいです。
方法としては、口を大きく開けると愛犬は嫌がってしまいます。まずは唇をめくる形で歯ブラシを挿入し、優しく歯と歯茎の間を擦っていきます。歯の先端だけを磨かないよう注意してください。歯を1本ごとに擦り、隣の歯に移動していく方法が確実です。
内側(舌側)の場合は、軽くお口を開けた状態で歯ブラシを挿入し磨きます。
ガーゼなどの時と同様に、必ず歯磨きペーストやお水で濡らした状態で行ってください。
歯石や口臭がひどい場合はどうしたらいい?
歯石や口臭がひどい場合は、動物病院で診てもらう必要があるケースがあります。
歯石がついている場合
既に歯石が歯にできてしまっている場合、歯ブラシだけでは落とす事は困難です。人間の歯と同様にクリーニングが必要になります。
スケーリングを無麻酔で行うことは、歯の表面を傷つけてしまい危険です。
動物病院では、麻酔をかけた状態で適切に歯のスケーリング・研磨を行い、歯石を除去します。その際に歯周病の度合いにより、歯周ポケットの中を綺麗に処置します。
既に歯周病が進行して根元が悪くなっている歯に関してはレントゲンで確認し抜歯することもあります。
口臭がひどい場合
全ての口臭は口腔内の問題とは限りません。腎臓などの内臓系に問題があると口臭が気になるケースがあります。
お水を飲む量やおしっこの量が増えるようであれば、一度動物病院で診察した方が良いでしょう。
既に歯周病が重度の場合は歯の根元の問題で口臭が発生しています。その場合は歯磨きのみで軽減することは困難です。
抗生剤が必要の場合や歯石がついている場合と同様に、麻酔下での処置が必要になると思われます。動物病院の受診が必要です。
犬の歯磨きが上手にできるコツ
歯磨きを上手に行うコツは、まず完璧を目指さない事です。
継続することがとても大切なので、すべての歯を最初から丁寧にやろうとすると時間がかかってしまいます。
そうすると愛犬そして飼い主さんの気が滅入ってしまいます。特に無理やり押さえつけることや、口を大きく開けることはとても嫌がるので注意しましょう。
まずは歯石がつきやすい歯のみ、上の歯のみ、下の歯のみなど、分割して磨くのもお勧めです。おやつなどを用いて褒めながら、楽しみながら行っていきましょう。
慣れてきたら、歯に歯ブラシをあてながら1本ずつずらして磨いていくと磨き残しも防げます。
歯磨きは継続が何よりも大切!
最初から歯磨きをうまくやろうとすると、当然時間がかかります。愛犬や飼い主さんもストレスになり毎日継続するのは難しくなってしまいますよね。まずは口元を触る練習から始めて徐々に慣れていきましょう。
最終的には歯ブラシを使った歯磨きができると理想的です。また既に歯の汚れがひどい場合や口臭がある場合は麻酔下での処置が必要かもしれません。その場合は一度かかりつけの動物病院を受診し口腔内の様子を診てもらいましょう。
まだ歯周病になっていなければこれからの歯磨きがとても大事です。毎日少しずつ、楽しみながら歯磨きを継続していきたいですね。
この記事を書いた人
千葉 恵
獣医師
日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事