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【獣医師が解説】犬にあげる水の種類や飲水量とは?正しい水の交換頻度も解説

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愛犬に与える水は、水道水が一番安全です。人は積極的にミネラルウォーターを飲む傾向があり、健康的なイメージがあります。しかし硬水のミネラルウォーターは、あえて犬に与える必要はありません

今回は愛犬に適切な水の種類や、与える量について解説していきます。

犬にあげても良い水と悪い水がある

 

前提として人が飲めないお水は、犬にも与えてはいけません。しかし、人が飲めるお水でも犬にはあげて良い水、あげない方が良い水があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

あげても良い水

まずは与えて良い水を見ていきます。

水道水

愛犬に与える水として、水道水が最も良いとされています。水道水はカルキ(塩素)で消毒・殺菌されています。そのため、衛生面に関して安心です。

消毒薬と聞くと抵抗があるかもしれませんが、消毒薬の残留量は少なく体には害がないと考えられています。

カルキが気になる場合は、浄水器や煮沸により取り除いても問題ありません。その際は消毒効果がなくなるので、水はこまめに交換するようにしてください。

軟水のミネラルウォーター

ミネラルウォーターは、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを含んでいます。ミネラルの含有量により硬水と軟水に分類されています。基本的に硬度120mg/L未満が軟水、120mg/L以上が硬水とされています。

ミネラルは健康な犬には問題ありませんが、結石ができやすい子などには不向きです。軟水はミネラル分が少ないため、犬に与えても全く問題はありません。

犬用のミネラルウォーター

最近では犬用のミネラルウォーターが販売されています。軟水や超軟水のため飲んでも全く問題ありません。

与えない方が良い水

状態によりますが、与えない方が良い水を解説していきます。

硬水のミネラルウォーター

絶対にダメと言うわけではありませんが、体質的に結石ができやすい子や腎臓に疾患がある子に関してはおすすめできません

硬水はミネラルの成分が多く、カルシウムやマグネシウムなどが含まれています。ミネラルは尿石症の材料となるので、あえて与える必要はありません。ミネラルが豊富だとお腹を壊しやすくなるので注意が必要が必要です。体質的に問題ない子であれば与えても害にはなりませんが、特に飲ませるメリットもありません。

井戸水

井戸水を与える場合は、水質検査を受けた安全なものにしてください。井戸水自体が悪いわけではありませんが、管理によっては動物のフンなどが入り感染症になるリスクがあります。

法律上、井戸水は水質検査の義務はありません。そのため、気にせず犬に与えてしまっている方がいるかもしれませんが、地域によっては危険です。定期的に水質検査・管理をするか、できないのであれば水道水など他の水を与えるようにしてください。

炭酸水

炭酸水自体は特に中毒物質は含まれていませんが、あえて与える必要はありません。喉を潤すには飲みづらく、ガスもたまり常飲するするメリットは特にありません。

犬が一日に飲む水の量

1日の犬に必要な水分量は、体の大きさや活動量により異なります。おおよその目安は、犬の体重1kgあたり50~60mlと考えられています。

例えば5kgの犬の場合、250ml程度の計算になります。暑い日や、活動量が多い子に関しては、その限りではありません。

水を飲む量が少ない時、多い時に考えるべきことを見ていきましょう。

水を飲む量が少ないときに疑うべきこと

食欲もあり、とても元気な状態でお水を飲む量が少ない場合は、まず問題はないと思われます。

水分量が足りている

高齢になってくると、寝ている時間が長く活動量が減少します。そのため、以前に比べて水を飲む量は減少しますが問題はありません。

水分の多いウェットフードを与えている場合なども、お水自体を飲む量は減りますが問題はありません

口の中の異常

口が痛い場合や、舌がうまく動かせない場合にお水が飲みにくくなります。一度、動物病院で口の中を診てもらうと良いでしょう。

飲む姿勢が取れない

体に痛みがある場合、姿勢がとりにくくお水が飲みづらくなります。椎間板ヘルニアで首や腰に痛みがあるとよく見られます。

お水を飲む量が少ないときにできること

健康な子の場合、無理に水を飲ませる必要はありません。しかし、少し工夫することで水を飲むようになる可能性があります。

特に尿石になりやすい子の場合は、水分を少し多めに取った方が結石ができにくくなるのでおすすめです。

犬の尿石症についてはこちらの記事でご覧いただけます。

お水の温度を変える

まずは簡単な方法としてお水の温度を変えてみましょう。犬によって好みの水の温度があります。そのため、ぬるま湯や冷たいお水など温度を変えることで飲んでくれるかもしれません。温める場合、熱いと火傷してしまうのでぬるめの温度にしてください。

水を冷やしすぎるとお腹を壊す恐れがあるので、そちらも注意してくださいね。

食事に水分を取り入れる

食事をウェットフードにすることで水分を多くとることができます。また普段食べているドライフードを水でふやかすことで水分が取りやすくなります。

愛犬に合う理想のドッグフードの選び方はこちらの記事でご覧いただけます。

水の形を変えてみる

水をゼリー状や、氷にする方法もあります。氷の場合はやはり冷えすぎる可能性があるので、愛犬がお腹を壊さないように注意してください。

水を飲む量が多いときに疑うべきこと

何か病気に罹患していると飲水量が増えることがあります。特に腎臓病、糖尿病、ホルモン系の病気などが疑われます。

水を飲む量が多く続いている、いつもよりおしっこの量が多い、色が薄い、臭いが薄いなどがあれば一度、動物病院を受診することをおすすめします。

口臭でも健康状態がわかるので、こちらも参考にしてください。

水の飲みすぎは水中毒に注意

短時間に水を大量に摂取すると、『水中毒』と言う状態になり危険です。

水中毒とは短時間で水をたくさん飲みすぎることにより、電解質のバランスが崩れた状態です。症状は、ふらつきやよだれ、歩行異常、意識障害、痙攣などが見られます。さらに場合によっては命に関わります。

愛犬が意識的に水中毒になるほど水を飲むことは、あまり考えられません。問題は、無意識に水を飲みすぎることです。

例えばプールや水遊びに夢中で、自然と水を飲み込んでしまう場合などに、水中毒が起こりやすくなります。水を飲む事は悪いことではありませんが、無意識でたくさん飲むような状況にならないよう気をつけてくださいね。

犬の水は1日に何回くらい交換するの?

水は最低でも1日2回を目安に交換すると良いでしょう。東京都水道局によると、水道水は常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度、塩素の消毒効果が持続すると考えられています。

しかし、お水を飲む際に犬の口の雑菌が水に混入します。時間を経つにつれて雑菌が増えていくため、きれいな水を保つために交換しましょう。特に夏場など、暑い時期の場合はこまめに交換する方が良いです。

カルキを抜いた水道水や、水道水以外の水の場合は、塩素による消毒効果が期待できません。そのため、雑菌には注意が必要です。

災害時に備えてペット用の水はストックしておこう

災害時のために愛犬用の食料やお水など、最低限の備蓄はしておいた方が良いでしょう。愛犬がいつも食べている食料や水を用意しておくことはとても重要です。

お水はペットボトルのお水で十分ですが、軟水を選ぶようにしましょう。

愛犬には水道水がおすすめ

水道水は塩素が入っていて体に悪そうと思われている方もいるかもしれません。しかしこの塩素のおかげで、菌の繁殖を防ぎ感染症にかかりにくくなっています。

水道水に含まれる塩素の量も特に多くないため、愛犬の体への問題はありません。しかし気になる場合は、煮沸や浄水器によって抜くことができます。その場合は菌が繁殖しやすくなるため、水交換をこまめにしましょう。

水の種類まで考えてくれる飼い主さんがいて、愛犬は幸せです。水道水で十分ですが、どの水を選ぶにしても、新鮮な水をたっぷり飲めるような環境づくりを心掛けてくださいね。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

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