【獣医師が解説】犬がマーキングする理由とやめさせる方法を解説
犬が、家の中やお散歩中にあちこちにおしっこをかける行為を「マーキング」といいます。愛犬のマーキング行為で悩まれている飼い主さんはとても多いです。
犬がマーキングを行う理由を知ることで、飼い主さんのお悩みを解消できるかもしれません。
なぜマーキングをするのか、そしてマーキングを防ぐ方法について解説していきます。
目次
犬のマーキング行為とは?
犬のマーキング行為とは、様々な場所に少量ずつおしっこをする行為を指します。マーキングはおしっこには変わりありませんが、本来の排尿とは異なります。排尿は膀胱におしっこが溜まったら、溜まった分だけ排泄します。
基本的に、他の犬に対して自分のテリトリーを主張したり、発情中であることを示したりする場合に行う行為です。マーキングはオスに多い傾向がありますが、メスでも見られます。
犬がマーキングする理由
マーキングする目的はいくつかあります。基本的には本能によるものです。それぞれ見ていきましょう。
縄張りを知らせる
本来の犬のマーキングは、縄張りを守るための行動です。自分の匂いをつけることによって自分は強いんだぞ!大きいんだぞ!自分のテリトリーだぞ!と主張します。
できるだけ周りにアピールしたいので、他の犬が嗅ぎそうな場所や目立つ位置などにマーキングをしたがる傾向があります。
情報交換
おしっこにはその犬の様々な情報が詰まっていると考えられています。人で言う、名前のようなものです。マーキングすることによって、相手へ自己紹介をしているとも考えられています。
発情期を知らせる
メスも発情期を知らせる目的でマーキングを行います。マーキングでオスを引き付けます。
不安によるもの
怒られてしまったり何か不安を感じたりした場合に、マーキングをすることがあります。マーキングをすることで、気持ちを落ちつかせているのかもしれません。
環境の変化
家が変わる、家族が変わるなど環境の変化があると、愛犬の気持ちが落ち着かなくなります。安心するために、お部屋にマーキングを行う場合があります。
主従関係がうまくいっていない
飼い主さんより自分の方が偉いと思っていると、マーキングをしやすいと考えられています。相手より自分の方が偉いんだぞと見せつけたいようです。
犬のマーキングをやめさせるには?
おしっこの量が少ないとはいえ、様々な場所にマーキングをされてしまうと困りますよね。特にお散歩中に他の人の家の周りにマーキングをしてしまうと、問題になりかねません。
お外での愛犬のマーキング対策を見ていきましょう。
おしっこを済ませてからお散歩に行く
マーキングと排尿は違いますが、出ているものは同じです。お外に出ると匂いを嗅いでマーキングをしたくなりますが、肝心の尿がなければマーキングもしにくくなります。
そのため事前におしっこを済ませた状態でお散歩に向かうことで、マーキングを減らすことができます。
マーキングしそうな場所に近づかない
お散歩中にマーキングすることが多いですが、一般的に電柱やブロック塀、他人のお家の玄関等に行います。こういった場所は他の犬の匂いが付きやすいため、マーキングしたくなってしまいます。
マーキングする前は匂いを嗅いでからする傾向があります。匂いを嗅がせないことで、未然に防ぐことができます。マーキングしそうな場所にはできるだけ行かないようにしましょう。
避妊手術・去勢手術を行う
避妊手術や去勢手術を行うことでマーキングは軽減します。オスの場合は、マーキングの他にもマウンティングやおしっこ時の足上げ行動などを減らすことが可能です。また、外と比べて、家の中でのマーキングではより改善が認められます。
発情期にマーキングをするメスの場合も、避妊手術をすることによって改善が期待できます。
犬のマウンティングについてはこちらでご覧いただけます。
犬の去勢手術についてはこちらでご覧いただけます。
さらに性ホルモンに関係する病気を予防する事もできます。
メスの場合は、避妊手術をする時期によって乳腺腫瘍の発生を防ぐことができます。その他にも子宮蓄膿症等の生殖器に関係する病気を防ぐことが可能です。
犬の避妊手術についてはこちらでご覧いただけます。
一方で将来子供が望めないことや麻酔のリスクなどもあるため、よく考える必要はあります。
しつけをする
マーキングをしなかった時に嬉しいことが起きると覚えさせるのも1つの手です。
マーキングをしそうな場所で、マーキングをする前に『待て』などの声かけをします。マーキングを我慢できたら、ご褒美を与える、褒めるなどをすることで学習します。特に子犬は学習能力が高いため、早めに教えると効果的です。
家の中でマーキングしたときはどうしたらいい?
お外でのマーキングも困りますが、家の中でのマーキングもお掃除に困ってしまいます。
お家の中でできる対策を見ていきましょう。
マナーバンドをつける
手術は行いたくない、年齢的にも難しい場合はマナーバンドをつけるのも1つの手です。マナーバンドをつけることによって、マーキングが減るわけではありません。おしっこが飛び散らない分、お家をきれいに保つことができます。
他のお家に遊びに行く時などはマーキングする可能性があるため、マナーバンドをしておくと安心です。ただし蒸れやすくなるため、皮膚病にならないよう清潔に保つよう注意が必要です。
ストレスを取り除く
愛犬にストレスがかかっている場合は、ストレスを取り除くことが大切です。不安に感じることや恐怖に感じることなど、思い当たることがあれば取り除いてください。
場合によっては抗不安薬等のお薬を動物病院で処方してもらうのも1つの手です。
自由なスペースを制限する
縄張り意識が強くマーキングすることがあるため、自由なスペースを制限することでマーキングの頻度を下げることができるかもしれません。
成犬でもマーキングをやめさせることはできる?
成犬でも様々な対策を行うことで、ある程度マーキングを減らすことができます。先におしっこをしてから散歩をしたり、マーキングしそうな場所を避けて通ったりすることはきょうからでもできそうですよね。
ただし、しつけに関しては、子犬の頃に比べるとどうしても学習能力が落ちてしまいます。しかし絶対に無理というわけではないので、少し根気がいりますが長い目で見ていきましょう。
愛犬も飼い主さんもストレスなくしつけができるようになる方法は、こちらからご覧いただけます。
まだ愛犬が若い場合は、なるべく早いうちからしつけをしていきましょう。
おかしいな?と思ったら動物病院へ
ちょこちょこおしっこをするけど、場所を選んでいないような場合は、もしかしたらマーキングではないかもしれません。マーキングの場合は匂いをかぐ動作等の前兆が見られます。いきなりする事はあまりありません。
興奮していわゆる「うれション」と言われるようなものや、膀胱炎などの泌尿器系疾患が隠れているかもしれません。泌尿器系疾患の場合は、治療の必要があります。
うれションについては、こちらからご覧いただけます。
マーキングの前兆や、場所を問わない排泄の場合は、動物病院への受診をおすすめします。
この記事を書いた人
千葉 恵
獣医師
日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事