【獣医師が解説】犬の暑さ対策できていますか?梅雨時期・真夏日の対策方法のコツ
毎年夏になると、熱中症で倒れてしまう人のニュースをよく目にしますよね。
梅雨の時期から温度と湿度が上がっていき、過ごしにくい季節になっていきます。
犬も人と同様に暑さ対策をしていないと熱中症になってしまいます。むしろ人よりも分厚い毛に覆われて、お散歩も地面近くのため熱中症が起きやすい環境下にあります。
適切な暑さ対策をすることで、大事な愛犬を熱中症などから守ってあげましょう。
目次
犬は暑さに弱い?暑さ対策の重要性
犬の体温調節の仕組みや、暑さ対策の重要性について解説します。
犬の体温調節はどうやってするの?
人は暑い時には体温調節をするために汗をかきます。いわゆる水のような汗を出すためのエックリン汗腺が全身に分布しています。そのため全身に汗をかくことができます。脇にはアポクリン汗腺があり、汗の臭いの原因になります。
一方で、犬はアポクリン汗腺が全身に発達しています。しかしエックリン汗腺は肉球や鼻の頭付近などにしか存在しません。そのためアポクリン汗腺による犬特有のにおいはありますが、汗による体温調節は得意ではありません。
それでは犬は体温調節をどのように行っているのでしょうか?
汗で体温調節がしにくい代わりに舌を使います。よく犬が暑いときに舌を出してハァハァしていますよね。これをパンティングと言います。体にたまってしまった熱を外へ放出します。
湿度が高い状態ではこのパンティングもしづらくなります。そのため気温だけでなく湿度も体温調節に関わっています。
犬は暑さが苦手
このように犬は体温調節がしにくい動物のため、暑さには弱いと言えます。
人間の熱中症で救急搬送された患者数は、令和元年で7万人以上にのぼりました。熱中症は屋外で発症すると考えられがちですが、およそ4割の人が室内で発症しています。
環境温度が30度を超えると死亡数が急激に上昇する傾向が見られました。
犬もうまく体温調節ができないと人間と同様に熱中症になってしまいます。
犬の場合は環境気温22度以上、湿度60%が1つの目安と研究されています。そのため人よりも早い段階から熱中症対策が必要と言えます。
犬種や体の状態によっても、暑さの苦手度合いは異なります。
寒い地域出身の犬は暑さが苦手
寒い地域出身の犬は、体を厚い毛皮で覆われており、熱を蓄える構造になっています。多くはダブルコートといわれるオーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)がある構造をしています。
春と秋に換毛期があり、毛が生え変わります。アンダーコートは防寒の役割があるので寒さには強いですが暑さには弱いのです。
例)シベリアンハスキー、サモエド、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー・コーギー・柴犬・秋田犬・日本スピッツなど
短頭種は暑さが苦手
頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬種のことを短頭種といいます。短頭種は鼻が短く口腔の面積が狭いため、パンティングをしても気化して熱を逃すのが苦手です。
そのため体温調節がしにくく、暑さに弱い傾向があります。
例)フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ボクサー、パグ、シーズー、ブルドッグ、ペキニーズなど
肥満・高齢犬は暑さが苦手
肥満気味の犬は皮下脂肪が断熱材となり、熱がこもりやすくなります。また首周りの脂肪が多い場合は気管を圧迫し呼吸機能が低下します。
高齢犬も持病がある場合はもちろんですが、代謝が悪く呼吸機能が低下しやすいため体温調節は苦手です。
犬の暑さ対策5つ
今日からできる犬の暑さ対策を5つまとめました。
室内での対策
夏場は部屋を締め切った状態だと、あっという間に30度を超えてしまいます。
暑い日はなるべく冷房をかけるなど、犬が過ごしやすい環境を作ってあげましょう。湿度が高い状態でも熱中症になりやすいので、湿度が高い場合は除湿してください。
冷房の冷気は下にたまりやすいです。床にいる犬にとって冷やしすぎていないかも注意してくださいね。
室外犬の対策
犬小屋をできるだけ日光の当たらない場所に移動しましょう。屋根があっても犬小屋の中は高温になってしまいます。
特に暑い日には脱水症状を起こすことがあります。必ずお水はいつでも飲める環境にしてあげて下さい。
暑い時間だけでも涼しい場所に移動できるといいですね。水浴びも有効ですが、体を乾かさない状態で放置してしまうと皮膚病になりやすいので注意しましょう。
水分はとっても大事
体温管理のために水が必要です。そのためいつでも新鮮な水が飲める状態にしましょう。お水を置く場所は、日光が当たらないよう注意してください。
ケージで過ごす場合もお水が空にならないよう十分に補充してくださいね。
ブラッシングですっきりと!
ブラッシングをすることで、抜け落ちた毛を取り除くことができます。そうすることで毛の間に溜まった空気と湿気を外に出すことができます。
通気性が良くなると涼しい上に菌の繁殖を防ぐことができます。そのため皮膚病の予防にもなります。
特にダブルコートの犬は、春から夏にかけてアンダーコートが抜けてきます。ブラッシングをしてあげることで余分な毛を減らすことができるので効果的です。
サマーカットは効果的?
見た目が暑そうに見えるせいか、夏場はサマーカットをする犬が増えます。
サマーカット自体が悪いわけではありません。しかし、バリカンで極端に短いサマーカットをすると様々なトラブルが発生します。
毛刈り後脱毛症
毛を刈った後に毛が生えなくなることがあります。これは特にポメラニアンに多く、原因はあまり分かっていません。生えてきた毛が硬くなるなど、毛質に変化が起きることもあります。
紫外線の影響
毛が短いと紫外線を直接肌に受けてしまいます。そのため、皮膚の温度が上がりやすくなり体内に熱がこもってしまいます。ある程度の毛はあった方が、熱中症は防げると考えられます。
虫刺され
夏場は虫が増えるシーズンなので毛が短いと虫などに刺されやすくなります。
サマーカットをする場合はある程度の毛を残し皮膚を守れるようにしましょうね。
長毛犬なら湿気も注意してあげよう
長毛犬は毛がからまりやすく、毛玉ができやすい犬種です。毛玉をそのまま放置してしまうと湿気がこもりやすくなります。
また梅雨の時期は特に湿度が高いため、毛の中が蒸れやすくなります。蒸れた状態では細菌が繁殖しやすいです。こまめなブラッシングをして被毛を清潔に保つことが大切です。
真夏の散歩は涼しい時間帯を狙いましょう
犬はお散歩が好きな子が多いですが、行く時間によっては熱中症の原因となります。
日中のアスファルトは実際触ってみるとわかりますがとても熱いです。
私たちよりも地面に近いところを歩く犬にとっては、体に受ける熱が強くなります。熱中症にもなりやすい上に、肉球を火傷することもあります。
そのため、夏場のお散歩は早朝・夜遅めの時間が良いでしょう。また特に暑い日は無理をしてお散歩に行く必要はありません。
人間と同様に犬も暑さ対策がとても重要
熱中症は命に関わるとても危険な状態です。人間でも死亡例が多いように、犬でも命を落としてしまうケースが少なくありません。
特に体温調節がしにくい体や犬種の場合、熱中症になりにくい環境作りがとても重要となります。必要以上に部屋を冷やしすぎる必要はありませんが、少なくとも人が快適に過ごせる環境にしてください。
お散歩が大好きな愛犬の場合は、飼い主さんは少し大変ですが、早朝や夜遅めの地面が熱くなっていない時間帯に行くようにしましょう。その際はお水も飲めるように持参してくださいね。
この記事を書いた人
千葉 恵
獣医師
日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事