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【獣医師が解説】愛犬も飼い主もストレスなくできる正しいしつけの方法とは?

最終更新日:

愛犬をお家に迎え入れたら、一緒に生活するためにしつけはとても大切です。

しつけは犬の年齢や性格によって難しさが変わってきます。しつけの方法を間違ってしまうと、愛犬とご家族の関係性の悪化や、問題行動が増えてしまいます。

「褒めて伸ばす」という言葉がありますが、犬も褒めて伸ばすことはとても効果的です。
お互いがストレスにならないようにしつけをすることで、愛犬と家族の良い関係性を作っていきたいですね。

なぜ犬のしつけが必要なの?

人と犬が一緒に生活する上でしつけはとても重要です。例えば、犬自身は遊んでいるつもりで人を噛んでしまう。病気の治療が必要なのに、暴れてしまい適切な治療が受けられない。
このような状況は、人にとっても犬にとっても悲しいことです。

ところで、人と同じように犬にも性格があります。人見知りの子もいるでしょうし、やんちゃな子もいます。それは良い・悪いではありませんよね。
生活環境や年齢によって性格は徐々に変わってきますし、無理に治すものではありません。

では人を噛むことでケガをさせてしまうことはどうでしょうか?
野生動物で獲物を捕る能力を問われているのなら、相手を噛んで戦える能力はむしろ良いことです。しかし人と暮らす上では良いこととは言えないですよね。

愛犬が悪いことと認識せずに噛んでしまう。そうすると、ご家族や周りの人、動物からも避けられてしまい愛犬は辛い思いをします。

愛犬のしつけをすることは、家族にとってだけでなく愛犬自身が快適に過ごすためにも必要といえるでしょう。

犬のしつけをするタイミング

愛犬をお家に受け入れたその日が、しつけを行うタイミングです。
子犬の発達期を4つに分けると以下のようになります。

1新生子期

2週齢までの時期。まだ何もできない状態で母犬に頼っている時期です。

2移行期

2~3週齢の時期。目や耳が聞こえるようになり遊び始めます

3社会化期

3~12週齢の時期。7週齢くらいから離乳し、通常のご飯を食べ始めます。
さらに母犬や兄弟犬と触れ合うことで、犬同士のコミュニケーションを学び環境に慣れていきます。

4少年期・青年期

12週齢~性成熟までを少年期、性成熟~社会的に成熟するまでを青年期としています。
青年期は思春期にあたり、人と同様に扱いが難しい時期でもあります。

この中で、社会化期は環境に適応するためのとても重要な時期です。犬だけでなく、人やその他の動物の刺激にも順応していきます。この時期にある程度、人や動物と接したり、刺激を受けたりすることで環境に慣れていきます。

反対に、この時期にあまり他者との触れ合いや刺激がない状態で生活すると、成犬になったときに恐怖感を感じやすくなります。恐怖を感じると、結果的に攻撃性を示すことがあります。
そのため盲導犬や介助犬などでは、12週でまでに様々な刺激に慣れることで社会性を身につけています。

2021年6月時点での動物愛護法では、56日以下の子犬の販売を禁止しています。そうするとお家に迎え入れるのは8週齢以降です。
社会化期のことを考慮するとお家に迎え入れた日には、すでにしつけをするタイミングになります。

もちろん社会化期を過ぎた犬もしつけができないわけではありません。その代わりに時間が必要です。

言語学習を例に考えると、大人が言語を話すよりも子供は圧倒的な速さで身につけます。これは子供の方が順応性・適応能力が高いからです。

しかし、大人が学習できないわけではないですよね。それと同様に社会化を過ぎた犬では刺激に慣れるのに時間がかかります。根気よくしつけをしていきましょう。

しつけと併せて飼い主さんが学ぶべき”犬が食べてはいけないもの”を解説している記事はこちらです。あわせて読んでみてください。

「しつけ=怒る」ではない

『しつけは怒ること』というイメージがあるかもしれませんが、それは違います。

しつけを行う際にオペラント条件付けを考えるとイメージしやすくなるかもしれません。

オペラント条件付けは報酬や罰に応じて自発的に行動を行うよう学習することをいいます。言葉にすると少し難しいですが、

  • 刺激が出現することを正、消失を負
  • 行動が増えることを強化、減ることを罰

とすると、4つに分けられます

  1. 正の強化:刺激が与えられて、行動が増える
    例)お手をした → ご褒美がもらえた → 次もお手をするようになる
  2. 正の罰:刺激が与えられて、行動が減る
  3. 例)お子さんの近くに行った → 叩かれた → 次はお子さんの近くには行かなくなる

  4. 負の罰:刺激が取り除かれて、行動が減る
  5. 例)手を噛んだ→遊んでもらえなくなった → 次は手を噛むことをやめる

  6. 負の強化:刺激が取り除かれて、行動が増える
  7. 例)薬を飲む際に噛んだ→飼い主さんが投薬を諦めた → 次の投薬の時も噛む

犬が悪いことをして、罰を与え、悪いことをしなくなるは負の罰です。負の罰は、いわゆる『しつけ=怒る』という形になりますね。

しかし、正の強化では怒っていませんが、しつけとして成り立ちますよね。このように、怒るだけがしつけではありません。

報酬は褒める、おやつをあげるなど愛犬にとって嬉しいことをします。反対に罰を与える場合は基本的には無視・構わないというのが用いられます。愛犬にとっては飼い主さんに無視されることは辛いですからね。

また、体罰は絶対にしないでください。これは身体的にも精神的にも良くありません。

犬のしつけでよくある飼い主さんの悩み

  
犬のしつけに関するよくある悩みをまとめました。

愛犬の噛み癖

ものを噛むこと自体は悪いことではありません。しかし手などをかまれると甘噛みでも痛いですよね。犬本人も遊びたくて噛んでいることが多いので、悪いことという認識がありません。

この場合は噛んで良いものと悪いものを区別させる必要があります。

無駄吠え

犬や人が近づいたときにむやみに吠えてしまうことがあります。吠えることで犬や人がその場から遠ざかったと認識してしまうと、同じように犬や人が近づいた時に吠えてしまいます。

もともと他の犬や人に慣れておらず吠えている場合は、繰り返し会うことで慣れる可能性もあります。しかしすでに恐怖を感じている場合は難しいかもしれません。

むしろ苦手な刺激を繰り返し与えると、より過敏に反応してしまうことがあります。吠えなかったときに褒めてあげる。さらには代替行動といって吠えた場合にお座りをさせる。

このように代わりの行動を与えることで、結果的に吠えるのを防ぐのも良いかもしれません。

マーキング

おしっこを少しずつ色々な場所にすることをマーキングといいます。これは外に限らず室内でも見られます。

これは縄張り意識からくるもので、子孫を残す本能から生まれることが多いです。そのため去勢・避妊手術を行うことでマーキングの減少が期待できます。

マーキング行為が癖になってしまうと治らないケースがあります。子供を産む予定が無い場合は、将来の病気を防ぐ観点からも去勢・避妊手術をすることをお勧めします。

犬のしつけでやっておきたいこと

犬のしつけでやっておきたい基本項目をまとめました。

人に触れられることに慣れさせる

飼い主さんやその他の人でも触れるようになると、体のケアができるようになります。お家で体のケアができるようになり、トリミングサロンや動物病院でも適切な処置ができます。

トイレ

トイレのしつけがうまくいくとお家を汚さなくてすみます。お家のペットシーツで用が足せれば、天気が悪い時に外に行かなくてもおしっこを我慢しなくてすみます。

アイコンタクトが取れるようにする

何か指示をだす場合にアイコンタクトがとれると、コミュニケーションがとれやすくなります。

噛んでよいもの・悪いものを覚えさせる

噛むこと自体は悪いことではありません。噛んでよいものを認識させ噛むことによる事故を防げるようにします。

お互いにストレスがかからない犬のしつけの方法

問題行動を起こした時ばかり対処する形だとお互いにストレスがかかってしまいます
例えばオペラント条件付けの負の罰で考えてみましょう。
おしっこを適切な場所でしなかった場合に、かまってあげない・無視をする、だけではお互い疲れちゃいますよね。

正の強化では、おしっこを適切な場所にした場合に、すごく褒めてあげたりおやつをあげたりします。正の強化であれば、お互いのストレスがかかりにくいしつけになります。

愛犬が良い行動したら、必ずご褒美となることをしてあげる。罰ばかりにならないよう気を付けてくださいね。      

犬をしつける時の注意点

しつけも大事ですが愛犬にストレスはかかっていませんか?普段の生活で愛犬が満足して暮らせているかどうかはとても重要です。
強いストレスがあると問題行動を起こしてしまうことが多いからです。

犬の性格によってストレスの発散方法は異なります。例えばおもちゃで遊んだりお散歩に行ったり、愛犬の好きなことをすることでストレスを解消してあげましょう。

しつけは嫌なことじゃない

しつけというと怒ること、嫌なことといったイメージがありますが、そうではありません。褒めて伸ばす、という言葉もあるように犬も褒められることは嬉しいことです。褒めながらしつけをすることをベースにしながら、ダメなことも認識させていきましょう。

愛犬をお家に迎えたときは、すでにしつけに適した時期です。ご自身でしつけを行うのが難しい場合はしつけ教室などを利用するのも良いと思います。
正しいしつけで愛犬と良好な関係を築いていきましょう。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

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