ワンカルテ > 愛犬の健康を守る > 【獣医師が解説】犬の肥満の原因とは?愛犬の健康維持のための正しいダイエット方法を解説

【獣医師が解説】犬の肥満の原因とは?愛犬の健康維持のための正しいダイエット方法を解説

最終更新日:

愛犬がおやつを食べている姿は可愛いですよね。また、見た目がぽっちゃりしていると、可愛いと感じてしまうかもしれません。

しかし過度に体重が増えてしまうと、様々な病気になりやすくなります。
足腰に痛みが生じたり、心臓病になりやすくなったりします。

愛犬の適正体重や、体重が増えてしまった場合の減量法などについて、今回は解説していきます。

犬も適正体重を維持する必要がある理由

女性の方は、よくダイエットと言う言葉を耳にしますよね。日本ではダイエットは減量という意味でよく使われています。
病気を防ぐ目的よりも、見た目の問題で減量されている方が多いかもしれませんね。

犬の場合、見た目で考えてしまうと、もしかしたらぽっちゃりしていても可愛いと感じてしまうかもしれません。

犬の肥満を放置するといろいろな悪影響が出てくる

犬の肥満を放置すると、様々な悪影響が出てきます。

  • 関節に負担がかかる
  • 活動性や代謝が落ちてさらに太りやすくなる
  • 循環器や呼吸器系に問題が出てくる
  • 麻酔リスクが上がる

想像するとわかりますが、まず関節など足腰に負担がかかります。
小さな手足に過度な力がかかるため、重度になると痛みを伴います。

また、年齢を重ねるにつれて、活動性や代謝が落ちてきます。
そのため若い頃は運動で痩せていても、歳をとってくると太りやすくなります。

太った状態を放置すると、体が重く活動性が落ちてしまい、さらに運動量が減ってしまいます。この悪循環で余計に太りやすくなってしまいます。

その他の問題としては循環器や呼吸器系に問題が出てきます。気管が圧迫され呼吸が苦しくなってしまうことがあります。
また、心臓病などの心血管疾患、糖尿病、免疫力低下による感染症リスクなど多くの病気のリスクが高まります。

このようにただ単に、体重が重くなり物理的に体に害を及ぼすだけでなく、その他の病気にもなりやすくなります。

また肥満の場合、麻酔リスクが上がってしまいます。比較的高齢での場合、歯周病の治療を行うことがあります。その際は麻酔が必要です。

肥満の場合、通常の子に比べて麻酔リスクが上がってしまい、場合によっては処置ができない可能性があります。
必要な治療が受けられなくなるのは、良いことではありませんよね。

愛犬の適正体重を知る方法

犬の適正体重は、ボディー・コンディション・スコア(BCS)(※)などで判断していきます。
BCSは犬の見た目と体を触診することで、5段階評価していきます。

(※)https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide/pdf/8.pdf

BCS 1 (削痩)

骨格が浮き出た状態で肋骨や骨盤などがはっきりと見えている状態です。

BCS2(痩せ気味)

肋骨や骨盤を簡単に触れる状態。肋骨が少し浮き出ています。

BCS3(標準)

適度な脂肪に覆われ、軽く触れると肋骨に触ることができます。

BCS4(体重過剰)

見た目では肋骨は分かりません。横から見た際も、お腹のくぼみや腰のくびれは見られません。

BCS5(肥満)

厚い脂肪に覆われており、肋骨や骨盤を触る事は非常に難しい状態です。腹部が垂れ下がっておりくびれは全くありません。


※獣医師勤務先の院内で撮影。

理想的なのはBCS3です。
人と同様に、体の大きさなどもあるので、体重だけで判断する事は難しいです。
そのため、こういったBCSを合わせて判断していくと理想的な体型がわかってきます。

犬の肥満の原因

犬の肥満は大きく分けると2種類あります。単純性肥満と症候性肥満です

単純性肥満

多くの場合は単純性肥満と言われ、特に病気ではありません。
食べているフードやおやつなどの量が多いこと、運動量が少ないこと、の2つが主な原因となります。

症候性肥満

症候性肥満は何か病気があり、結果的に太ってしまうことです。

ホルモンのバランスによってなるケースが多いです。
例えば、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症、インスリノーマなどがあります。

いつもより元気がない、体重の増減、飲水量の増加、尿量の増加など、気になる症状があった場合は早めに動物病院を受診してください。
血液検査や画像診断によって診断することができます。

こういったホルモンによる病気の場合、治療をしなければ、食事変更や運動をしても痩せる事は困難です。

また避妊・去勢手術を行った後もホルモンの関係で太りやすくなります。

実は肥満とは関係ないケース

肥満とは関係ないのに太ってみえてしまうケースもあります。

腹水

お腹に腹水が溜まって、大きく見えている場合があります。
この場合はエコーなどの画像診断や血液検査が必要です。

妊娠

妊娠していてお腹が膨れている場合があります。室内で一頭のみで飼われている場合は、あり得ません。
しかし、未避妊、未去勢の犬を複数飼育している場合は、妊娠している可能性もあります。

腫瘤

お腹にできものがある場合があります。
お腹の中で大きな腫瘤ができていると、お腹が腫れて見えることがあります。
画像診断が必要です。

犬の肥満を解消!正しいダイエット方法

人間と同様に、痩せるためには食事療法と運動療法があります。

食事療法

いきなり絶食させたり、過度にフードの量を減らしたりするのは危険です。
量が急に減ってしまうと、ストレスになってしまいます。

そのため、なるべく量を減らさずに、満腹感を得られるようなフードを選びましょう。
減量に適した処方食などもあるため、そういったフードを使うと、無理なく体重を減らすことができます。

我が子に合ったドッグフードの選び方はこちらの記事で確認できます。

また食事で太る場合、おやつが多すぎるケースが多々あります。
人間にとっては、ひと口という大きさでも、犬の体重に換算すると何十倍にも相当しますよね。

現在おやつをあげている量が多い場合は、まずはおやつの見直しから行ってください。
全てのおやつを制限する必要はありませんが、量を減らすか、減量に適したおやつに変更してください。

運動療法

運動することによって基礎代謝量が増えてきます。
基礎代謝量が増えればエネルギーの消費が増え、太りにくい体になります。

注意点は運動すると筋肉量が増えます。脂肪量が減り、筋肉量が増えると体重自体は増加します。

体重のみで痩せたかどうかを判断してしまうのはNGです。
せっかく脂肪が減ってきているのに、誤った判断で減量を諦めてしまっては勿体ないです。

人間と同様に、健康的に脂肪を減らし筋肉をつけることで肥満を防ぎましょう。体重だけで判断しないようにしてくださいね。

愛犬のダイエット時の注意点

愛犬のダイエット対策をするときにはいくつか注意したい点があります。

無理な目標を立てないこと

今日から減量するぞ!と無理な体重設定をしてしまうことがあります。

人間と同様に短期間で無理に体重を減らすことは、体に負担になります。
少しずつ食事を減らすこと、少しずつ運動する事を意識してください。

また愛犬の減量には家族の協力が必要不可欠です。
家族の誰かが、隠れておやつをあげてしまったりしているケースも少なくありません。

そうすると減量をしているのに結果が伴わないため、途中で諦めてしまう飼い主さんもいらっしゃいます。

愛犬に減量が必要なことを家族全員で把握し、長い目で見て減量を行ってください。

太りすぎに注意しましょう!

私たちも、一度太ってしまうと体重を減らすのはなかなか難しいですよね。
犬も同様です。増えてしまった体重を元に戻すのはなかなか辛いものです。

愛犬がおやつを食べている姿は、確かに見ていてこちらも嬉しくなります。
しかし、そのせいで将来病気になってしまったら、とても悲しいですよね。

愛犬が太り過ぎてしまう前に、適切な運動やおやつの与えすぎに注意しましょう。

既に太ってしまった場合も、極端に体重を減らそうとすると体に負担がかかってしまいます。
長期的な目で目標の体型を目指していきましょうね。

この記事を書いた人

千葉 恵
獣医師

日本獣医生命科学大学卒業
卒業後、千葉県の動物病院にて小動物臨床に従事

あわせて読みたいコラム

あわせて読みたいコラム